─── 今回、架台を高くしてその下の土地を活用する「ソーラーシェアリング」という形で太陽光発電を導入していただきまして、ありがとうございます。 まだ高知県で導入しているところは少ないと思いますが、着目された経緯などお聞かせください。
浜田取締役 この先、地域を守り発展させていくために、農業以外の事業で多角的に取り組める要素があればと考えていました。この土地は農地として基盤整備を行っているので、太陽光発電への転用は不可能だろうと思っていたところ、条件によっては転用許可が取れるということがわかりました。 太陽光パネルの下で付加価値をつけた特徴のある作物を作ることができれば、発電で稼ぎながら下でも収益が得られます。そうすれば雇用条件の向上や、雇用の拡大にもつながっていきます。
─── 太陽光発電の導入については以前からお考えでしたか?
浜田取締役 一昨年の11月に自宅に太陽光パネルをつけました。そこで感触を得ましたのでソーラーシェアリングにも興味を持ちました。 そして今回、FIT(固定価格買取制度)により20年間の収入が確定するということも含め、宮地電機さんにシミュレーションしていただいたところ、借入と収入の目処が見え、事業化に踏み切りました。
─── 今回は県の承認を得ることが困難だったと伺っています。
浜田取締役 はい。何度も申請書類の訂正を求められ、宮地電機の大原さんと一緒に県庁を訪問し、詳細な打ち合わせと修正を重ねました。 日射量が少ない環境で農作物を作ったデータがなく、高知大学の宮内先生にご協力いただきながら事業計画を策定しましたが、認められるまでになかなか時間がかかりました。
─── 実際にソーラーパネルの下でどの程度育ち、どのくらい収入につながるかという予測の部分ですね?
浜田取締役 そうです。ソーラーパネルの下では日照量は30%になります。その環境下で育つ作物を探すことから始め、 サトイモ、レタス、アシタバ、コンニャク、ショウガなどを選びました。特に地元産としては夏場に少ないレタス、地域で加工して売り出せるコンニャクなど、期待を寄せています。 今は試しにやっているものもあり、県の方からも積極的に作物変更をして検証をするように言われています。
─── 今年の4月から作り始めたということですが?
浜田取締役 当初はいろいろと課題もありました。陽が当たらないので土の渇きが悪く、作物が傷んでしまったり、パネルからの雨水が落ちるところは水の勢いで土が流れてなくなったりしました。 そこで水はけをよくしたり、雨水が入らないようマルチ式にしたり、課題を克服して収量が見えてきました。
野菜は収量80%でようやく成功。3年ごとの報告では、収穫の成果をしっかりと示したいです。
─── 構造的にもいろいろな制限があったようですね?
浜田取締役 はい。ここは標高230mの高地ですので、冬には雪が積もります。60cmの積雪に耐えうる構造にしなくてはならず、通常よりもかなり頑丈な施工が求められました。 台風の時の突風も心配で、強度計算を行い十分耐えられる様に設計をしました。その他、日照率の計算書、クイの座標位置など細かい情報の提出が求められ、難儀しました。
─── 工事も大掛かりで大変だったのでは?
友草主任 国道から現場に入るために3mの高さしかないJRの線路下をくぐらなくてはならず、そこは4トン車しか入れません。 キュービクルを分割で製作し、10トン車から4トン車へ積み替え搬入し、現地でメーカーによる盤間接続する方法で克服しました。
─── ソーラーシェアリングのメリット、デメリットについてはどのように考えていらっしゃいますか?
浜田取締役 炎天下でも高収入につながる野菜が育てられるチャンスですし、パネルがあることによって日陰ができるので、女性や高齢者は働きやすくなります。雇用も増えると思います。
ただ、ポールには十分に気をつけなくてはなりませんね。トラクターで自在に走り回ることができません。 そこが通常の畑と大きく異なるところです。
─── 今後のソーラーシェアリングの可能性についてお聞かせください。
浜田取締役 今回は申請がなかなか通らず、あきらめようかと思ったこともありました。農業は基礎資金がなく、 季節状況によって売上も変わってきます。一回の投資をすると、その後収益を黒字に持っていくのは大変です。 その点、太陽光発電は一定収入が得られるので、何としても承認をいただきたい一心でした。 土地を活用し、農業を守り、地域を活性化する有効な手立てです。一次産業を守る方向に向かえば、ソーラーシェアリングは 増えていくのではないかと思います。農業や地域を守ろうとする人には、規制を緩和するべきだと思います。
─── ㈱サンビレッジ四万十様としては拡大の予定はありますか?
浜田取締役 実は今回、この第2発電所とともに、第1発電所の申請も承認されました。我々の資金だけでは賄えないことから、 第1発電所は地元の林業事業者に土地をお貸しして、地代を収入にしています。この収入も次のステップに生かしてゆきます。
─── ソーラーシェアリングも然り、会社組織として、先進的な独自の営農に取り組んでおられますね?
浜田取締役 乳酸菌をまくカルテック栽培により、減農薬で米や野菜を育てています。 消費者の求めている良いものを作ることで、支持を集めています。 小さな集落が一つになり、サラリーマン待遇で農業を担っていく。これからの時代、 人が残るためには必要なことだと思います。今、我々が安定した収入を得られる 仕組みを後継者に手渡したいと思っています。
─── ソーラーシェアリングは、地域の未来に向けての取り組みですね。今日はありがとうございました。
高知を代表する、ナス・ピーマン・きゅうり・トマトといった野菜は太陽が燦燦とい降り注ぐ日向を好みます。しかし、すべての野菜が日向で育つのではなく、半日陰の方が生育環境に適している、レタスや里芋、ホウレンソウ、アスパラガスなどの野菜もあります。それらの野菜の生育のため、何か太陽光を遮るものが必要だとしたら…ソーラーシェアリングは野菜にやさしく、後継者育成に取り組む事業主様にやさしく、そして地球にやさしいシステムです。
宮地電機 広報 菅野乃美