徳島県鳴門市にある大塚国際美術館。陶板で原寸大に再現した西洋の名画が1000点以上並び、鑑賞をより楽しむための、音声ガイドの貸し出しを行っています。従来のシステムは操作が複雑でわかりにくいというご意見もあり、高齢者や外国の方にも簡単に使える新システムを導入されました。「わかりやすさが飛躍的に向上し、貸し出しの時間短縮にもつながった」という新システム。使い方を説明するビデオの制作も含め、宮地電機にとっては新しい分野への挑戦となりました。

─── 今回、音声ガイドシステムを導入いただき、本当にありがとうございました。このようなシステムは、当社としては初めての取り扱いとなります。ご用命いただきました経緯など聞かせていただけますか?

梶村課長 当美術館では、iPod touchを使用した画像と音声でご案内するガイドを利用していました。しかしながらお客様には操作が難しく、鑑賞の途中で「操作がわからない」と貸し出しカウンターまで引き返して来られる方が多くいらっしゃいました。これからは海外からのお客様の増加も見込まれますので、もっとわかりやすいシステムを導入できないかと考え、いつも電気設備全般をお願いしている三和電業さんに相談しました。

近藤様 残念ながら当社にはノウハウがなかったため、いつも視野を広く持って仕事をしている宮地電機の加川さんに何かいいものはないかと聞いてみたんです。

加川課長 私も初めての事例でしたが、探せば何かあるだろうと。当社には弱電のプロがいるので大丈夫だと考えてお引き受けし、堀内課長と梅木主任にお願いしました。

─── この方式の音声ガイドは、他の美術館で見かけるボタン式のものとはずいぶん違いますね?

梶村課長 ボタン式のものは2桁、3桁の数字を入力し、さらにスタートボタンを押す必要があります。もっとシンプルで簡単なもの、直感的に操作できるものをとお願いしました。

加川課長 いろいろ案を出す中で、一時は先進的な機器を利用する方向に行きかけたことがありました。しかし、それでは操作が煩雑になるので、もっとアナログでわかりやすいものをと基本に立ち返り、考え直しました。その中で、加藤さんのお子様が使っている英語教材が話題になりました。

加藤係長 小さな子どもでも簡単に操作ができて、タッチするだけで音声が出るのを見て、これは使えるのはでないかと。

梅木主任 タッチペン式の機器がいろいろある中で、グリッドマーク様のシェアが高く、カスタマイズも可能なことがわかりました。世良さんに一緒に製品開発をしていただけるようお願いし、試行錯誤を繰り返した結果、このタッチペンとカードを組み合わせた仕様になりました。

─── 先ほど館内で利用させていただきましたが、カードの番号にタッチするだけですぐに音声が流れ始めました。使い方が簡単で、しかも軽くて首からかけていても気になりません

加川課長 当初は作品の横にスイッチを設置して、そこにタッチする方法も検討しました。しかし、離れた位置から見ている人にとっては、壁に近づいて手を伸ばすという行為そのものに抵抗があるかも知れませんし、混雑時にはスイッチに近づけないこともあります。

菅野課長 デザインを担当させていただきましたが、タッチペン式に決まった後も、このカードに行き着くまでずいぶん悩みました。軽量かつお客様がスタイリッシュに持ち歩けるものという視点で考えました。

梶村課長 お客様が鑑賞しながら迷いなく操作できること、確実に番号にタッチできることを重視していただきました。軽くて見やすくて、いい仕様です。

世良事業部長 カードには1~107の番号が並び、1つの番号ごとにタッチペンのスイッチとなる情報が埋め込まれています。この番号が小さすぎると見えづらかったり、隣の番号にタッチしてしまう恐れがありますし、大きすぎるとかさ張ります。ちょうどよい大きさなりました。

─── タッチペンは大塚国際美術館様用のカスタム製品と伺っていますが?

世良事業部長 カードには1~107の番号が並び、1つの番号ごとにタッチペンのスイッチとなる情報が埋め込まれています。この番号が小さすぎると見えづらかったり、隣の番号にタッチしてしまう恐れがありますし、大きすぎるとかさ張ります。ちょうどよい大きさなりました。まず、美術鑑賞のための機器ということで、イヤホンが外れた場合、音がもれないようにしてほしいとのご要望がありました。今回、200本を注文いただきましたが、200というロットでは専用機を作ることができなくて、既存の製品一つひとつに数種の特別な対応をいたしました。

加川課長 音を出さないというカスタマイズは特殊な注文なんですよね?

菅野課長 私も加川課長からの応援要請を受けて、いろいろ意見を述べさせていただきました。当初はお客様のファッションを損なわないよう、黒にしたいとお願いしたり...。

世良事業部長 黒い製品はないので、ケースのみ特注にして手作業で入れ替えることを予定していました。しかし最終的に既存のオレンジをお選びいただき、納期を早めることができました。

─── とても短い納期で開発を進められたと伺いました。

梶村課長 これまでの音声ガイドが使いづらかったことと、100台しかなかったことから、来館者が多いゴールデンウィークに200台欲しいとお願いしました。

加川課長 1月頃から打ち合わせを始めたので、実質4ヵ月です。音声ガイドの中身については、元々お使いのものを流用できたのがよかったです。だいたいの方向が決まってからは、音声データを入れた実機のサンプルを作ってご提示し、具体的な話を詰めてゆきました。

梅木主任 ストラップやうっかりお持ち帰りになるのを防止する防犯ブザー、ヘッドホンなどを選定し、現場で実際に使いながら使用感を確認し、取り付け方、余分なコードの始末など細部にわたって何度も改良しました。

─── お客様への使い方を説明するビデオの制作と、上映するためのモニターもご用意させていただいたようですね?

梶村課長 以前は、使い方を説明するだけで5分ほどかかっていました。スタッフの手も取られますし、お客様も鑑賞に時間を使いたいわけですから、これではいけないと。

加藤係長 外国のお客様も増える中、それを見ただけでご理解いただけるビデオが必要だと考えていました。宮地電機では結婚式などのビデオも制作していると伺って、加川さんに相談しました。

加川課長 これも当社に専門スタッフがいるからこそできる仕事です。まず広報・デザイン課に絵コンテを依頼し、生活文化営業部の松田副部長自らに撮影をお願いしました。ちなみに出演者も弊社社員です(笑)。社内の力を結集してきっちり撮ってもらいました。

梶村課長 長い撮影をして、必要なところを残す編集方法を取っていただいたので、よいものができました。貸し出しカウンターの前に3台、展示場入口に2台モニターを設置していますが、皆様これを見てスムーズに鑑賞をスタートされています。

─── ゴールデンウィークから貸し出しが始まり、お客様の反応はいかがでしょう?

加藤係長 たくさんのお客様にご利用いただき、ゴールデンウィークにはこの新規の200台と、以前からあるiPod touch100台、合わせて300台が3回転しました。以前は貸し出しに時間がかかり、大行列となってお客様にご迷惑をおかけしていましたが、今は大変スムーズです。

梶村課長 レストランでも着けたままお食事をしてらっしゃるお客様をよく見かけます。オレンジは目立つので、他のお客様の目も引きますね。途中からでも「貸してほしい」とおっしゃるお客様も増えました。ただ台数が足りていないので、増やすことも考えなくては。同時に進化させてゆくことも視野に入れていきたいですね。

─── 4ヵ国語に対応していますが、外国のお客様にも問題なくお使いいただけていますでしょうか?

梶村課長 はい、それはもう。ビデオを見ていただいて十分ご理解いただいています。

加藤係長 お使いになるお客様が、「悩まずに簡単に使えるものを」と望んでいたので、とてもよいシステムを導入できたと思っています。ありがとうございました。

世良事業部長 我々の製品は、紙(コード)とタッチペン(ハード)を使って音を鳴らす(コンテンツ)の、三位一体のソリューションです。今回は、皆様のお力により、お客様の困りごとと現場の困りごとのすり合わせがうまくいき、2つ同時に解決することができたことがよかったです。

菅野課長 ありがとうございます。当社にとりましても、新しい事例としてよい経験をさせていただきました。今後も新分野に挑戦する糧にしてまいります。

菅野課長 「ワンタッチ音声ガイダンス」「アートタッチ」の利用方法を説明するビデオの制作を担当されましたが、いかがでしたか?

松田営業副部長 私はちょうどラ・ヴィータ(宮地電機 生活文化営業部)ができた20年以上前から(※1993年設立)ウエディングビデオの撮影・編集に携わっています。その間も社内外からの依頼で様々なビデオ...例えばHOW TOビデオや建築施工事例ビデオ、イベントのビデオやコンサート・発表会のビデオなど制作してきたので、特に戸惑わず"わかりやすいビデオを作ろう"という思いで取り組みました。

菅野課長 "わかりやすい"というのは大切なキーワードですね。

松田営業副部長 "見てわかる" "お年寄りから小さいお子様までよくわかる"というのは、このような利用方法のHOW TOビデオにとって一番大事なポイントです。映像は極力シンプルに。難しく作ったり、ゴチャゴチャした映像では伝わりづらくなってしまいますから。

菅野課長ベテランの松田副部長が、私の描いた絵コンテをとても尊重してくれたことにも驚いたのですが。

松田営業副部長 制作物は依頼してきてくれた人のものです。自分の作品を作るわけではない。自己満足になってはいけないと思いながら制作しています。

宮地電機には弱電のプロフェッショナルが存在します。その筆頭が堀内課長と梅木主任であるといっても過言ではな いでしょう。音響や映像など情報伝達ツール商品の扱いに慣れていることもあり、お客様の細やかなニーズにも柔ら かい発想で応えている姿は「さすが!」の一言でした。多種多様な業態の宮地電機だからこその、様々なジャンルの プロフェッショナルと、それをコラボレートする営業のプロの情報収集能力が良い化学反応をおこした事例でした。
宮地電機広報 菅野 乃美