———新築おめでとうございます。とても素晴らしい、素敵なお住まいです。眞鍋様は、最初から建てたい家、住みたい家の具体的なイメージがおありだったのでしょうか?
眞鍋様 私は長く神奈川県に住んでいて、2年前にUターンしてきました。前の家はとても古く、トイレも風呂も別棟で、大きな段差もありました。高齢になった母にはとても不便でしたので、暮らしやすいようにバリアフリーの家にしたいと思いました。
———どのようなご縁で水野様に設計を依頼されたのですか?
眞鍋様 いろいろなモデルルームを見る中で、「木と人・出会い館」に行った時に、水野さんがたまたまその日の当番設計士としてそこにいらっしゃったんです。手掛けてこられた住宅の写真なども拝見し、今日ここで出会ったことに縁があると思い、お願いしました。
———「木と人・出会い館」に足を運ばれたということは、木の家にしたいという思いがあったのでしょうか?
眞鍋様 はい。木のぬくもりを感じる暮らしを望んでいたので、絶対に木造にしたかったんです。
———水野様は住宅を主に手掛けていらっしゃるとのことですが、家づくりのコンセプトを教えてください。
水野様 その土地の歴史や風土になじむ建築ですね。素材選び、光の入れ方、風の入れ方も考えます。今回も30年、40年住んだ時に、ここになじむようにと思って設計しました。
———木がふんだんに使われていますが、高知県産の木材ですか?
水野様 床と構造材は地元の杉、ヒノキを使用しています。高知の家ですから、同じ気候風土で育った高知県産の木を使うのが一番です。
———土地になじむ家とのことですが、こちらの眞鍋様邸の「なじむ」とはどのようなところでしょう?
水野様 ここの敷地は、湖の方に向かって傾斜があります。この段差をどう生かすか、そして後ろの山並みに沿うような建物の形状を考えました。
———なるほど。独特な建物の形状は背景となる山並みになじんだ形なのですね。入ってすぐに目を引くのがこの薪ストーブですが、本当に素敵です。
眞鍋様 これは私がどうしても入れたかったものです。決して安い物ではありませんが、大栃の冬はかなり寒いので。今年の4月からここで生活を始めて、ちょっと寒かった時期に数日間火を入れました。とてもやわらかで、じんわり沁みるあたたかさです。
———薪ストーブは、吹き抜けのあるこの空間の主役になるものですね。弊社には、照明設計とウィンドウトリートメントのご用命をいただきましたが、池内さん、眞鍋様・水野様のご意向にどのようにお応えしていったのですか?
池内社員 まず、お二人が考えられた設計図面を見せていただき、家づくりのコンセプトを伺って、建築になじむ明かりを考えました。主張しすぎないシンプルな器具、やさしい光が出る工夫、建築デザインが生きる明かり。そんな観点でみなさんと打ち合わせを重ね決定しました。要所要所に必要な明るさを確保しつつ、明る過ぎない照明を意識しました。
———眞鍋様は、照明についてどのようなご要望が、おありでしたか?
眞鍋様 あたたかい明かりがいいなと思っていました。そこで今回は電球色をベースに設計してもらいました。今まで住んでいた家は、白く明るい光の照明でしたし、間接照明の下で生活するのも初めてで、最初は暗く感じましたが、慣れるとちょうどいいですね。すごく落ち着きます。
———廊下の光の広がり具合もとても素敵です。
池内社員 壁や天井が白いので、光が美しく伸びます。廊下はダウンライトとブラケット、足元灯で構成しています。足元灯は暗くなると自動で点灯する器具を採用し、お母様の寝室からお手洗いまでの導線に提案させていただきました。夜中にお手洗いに行く際にも、まぶしさを感じることなく安全に歩行できます。
———リビングの照明器具はとてもユニークなデザインですね。これはどなたが選ばれたのですか?
水野様 池内さんからの提案です。天井から垂らすと空調で揺れ、壁から引き出す形の照明が適しているだろうと考えていたので、イメージ通りでした。
池内社員 このスタイルの照明はいくつかあったのですが、アームの長さや、可動性、テーブルの位置や大きさのことを考えて、最終決定しました。
水野様 テーブルの上とストーブを照らすことができ、ちょうど良い器具が見つかりました。
———カッコいいです。確かに、ペンダントでは遠すぎる、ダウンライトではつまらないですね。
池内社員 天井は木の構造を生かしたデザインになっており、極力穴を開けたくないという思いもありました。明るさを確保しながらも、意匠を美しく見せるにはどうすればよいか、ということを考えながら設計しました。
———調光・調色も取り入れているのですね。
池内社員 雰囲気を自在に変えられるよう、随所に調光を採用しています。基本的には電球色の器具が多いですが、お母様が主に使用されるというキッチンの流し元灯には、昼白色を採用しています。お姉さまのお部屋の流し元には、スイッチで光色切替が可能なダウンライトを採用しました。
———リビングは、大きな窓が南向きに上下二段に並んでいます。ウインドウトリートメントとしてはバーチカルブラインドを選ばれています。
池内社員 こちらの窓は、全開口のサッシを採用しているので、広々とした開口部を邪魔しないものをと考え、バーチカルブラインドにしました。部品色はサッシの枠色に近い色を選び、カーテンを開けた時にも一体感が出るようにしています。吹き抜け部分は電動で、リモコンで開閉できるようにしています。
水野様 吹き抜けがあり、目線が上下に行く部分なので、タテのバーチカルブラインドがきれいですね。ここは窓が大きい分、光の差し込みも大きくなるので、ガラス自体「Low-E」という断熱性の高いものを使用しています。
池内社員 お母様のお部屋はカーテン、2階の和室はロールスクリーン、仏間はプリーツスクリーンを採用し、部屋の目的に応じた使い勝手の良さと、外から見た時の印象も考えました。
———照明と同様、建物になじむウィンドウトリートメントですね。
水野様 昼間は窓から明るい光が入ってきて、人はそれを頼りに暮らすわけですが、通常はそれを照明とは言いません。けれど、窓からの光があって、天井から反射する光があって、その中で明るさを決めてゆく、トータルの明るさを考慮した照明計画を期待していました。見せる照明は見せる照明であって、その他は見せない照明で全体の明るさを確保するこのプランは期待どおりで、宮地電機さんにお願いしてよかったなと思っています。
———ありがとうございます。照明器具が建物の意匠を邪魔してはいけないという考え方は、社内にも浸透しています。ウッドデッキも素敵ですが、外構にも光の演出をしていますか?
池内社員 近くに街灯もあるため、現在は玄関周りだけにしています。窓が大きいので居室から漏れる明かりでちょうどいいぐらいだと思います。外構の照明は増やせるように配線していただいていますので、眞鍋様のガーデニング計画が進む中で、必要であれば増やしていくという方向にしています。
———空調機器も担当させていただき、ありがとうございました。
池内社員 空調は、冷房の効きを考えて、機能重視でセレクトしました。冬場は薪ストーブが活躍しますし、ストーブの窓から見える火も、明かりの一つになります。
眞鍋様 薪ストーブも照明器具の一つと考えると、ますます今年の冬が楽しみです。薪の準備は大変ですけれど(笑)
○ ライター 深田美佳 / ○ 写真 釣井泰輔「ツルイスタジオ」 / ○ 取材日 2019.06.29