天然温泉 はるのの湯様の場合

2017年に新体制となり、さまざまな改革を進めてきた「天然温泉 はるのの湯」様。省エネは大きな課題の一つでしたが、「省エネルギー相談地域プラットフォーム構築事業」(以下プラットフォーム事業)を通して「何にどう取り組むか」が明らかになり、前社での取り組みがスタートしました。

宮地電機株式会社 市場開発室 省エネルギー担当室
開発課長代理 佐古文男
宮地電機株式会社 市場開発室 省エネルギー担当室
技術顧問 前田和夫
天然温泉 はるのの湯
株式会社横浜クラブ 社長 福島松明 (2019.02当時)

中小企業等の省エネ取り組みを支援するため、全国各地域で経済産業省資源エネルギー庁の「省エネルギー相談地域プラットフォーム構築事業」で採択された省エネ支援事業者が活動しています。宮地電機もその一つで、高知県内の中小企業を対象に省エネと経営の専門家がきめ細かくサポートします。

福島社長 経営の立て直しをするべく、2017年の9月に横浜クラブの社長に就任しました。当時の状況を見ると、絶対的に売上が足りませんでした。まずは客室稼働率を上げて売上を伸ばすことを優先し、経費削減についてはその後にと考えました。1年目でそこそこの成果が上がったので、翌年から経費の見直しを始めました。メーカーの意見を聞いたり、自分たちで調べたりしましたが、我々は専門家ではないので不透明だったり、正しいかどうか判断できないこともありました。外部から施設長を迎えて取り組んだこともありましたが、それも限界がありました。今回、このプラットフォーム事業についてお話をいただき、まさに渡りに船ということでお願いした次第です。

——— 具体的に、御社ではどのようなことに取り組まれていたのでしょう?

福島社長 電球をLEDに替えたり、ボイラーの燃料に経費がかかっているということで、県の補助金を利用してバイオマスのボイラーを導入しました。しかし、実際にやってみると重油のボイラーも併用しないと十分な湯温が得られないことがわかり、両方稼動する中で燃料を最小限に抑えることをやってきました。

——— バイオマスボイラーでは、熱量が不足するということですか?

福島社長 理論的には十分なはずでしたが、古い施設に新しい機器をつけても、能力を100%発揮できないということが起こりました。計算上はバイオマスのボイラーだけで賄えることになっていたのですが、実際はうまくいきませんでした。

——— 今回のプラットフォーム事業はご存知でしたか?

福島社長 いいえ、宮地電機さんにご紹介いただいて、初めて知りました。省エネ診断というものがあることも教えていただきました。

佐古 今回、この事業についてご説明する中で、まだ省エネルギーセンターの無料省エネ診断を受けておられないということがわかったので、受診していただくようにお願いし、同時に私どももエネルギー使用量の実態把握に動きました。 本来の流れでしたら、我々はその診断結果を踏まえて掘り下げた調査や分析をするところですが、省エネ診断は、結果が出るまでに時間を要します。結果が出る前から現場に入ってボイラー等の使用状況をお聞きし、図面をお預かりして使用エネルギーの計測にかかりました。省エネルギーセンターでは照明や空調など電気的なことを、我々は最もエネルギー使用量が多いボイラーと付属設備であるポンプ等を切り口にしました。

——— 異なる切り口で診断をされたのはなぜでしょう?

佐古 省エネルギーセンターの診断は1日で行うものですから、これだけの設備になると限界があります。恐らく、照明やエアコンの域を出ないだろうと推察し、我々はエネルギー使用量も多く診断に時間がかかるであろうボイラーの方を優先的に調査しました。

——— 「ここだ!」というポイントは見つかりましたか?

佐古 入浴施設ですので、やはり風呂を沸かすエネルギーの割合が大きいです。建物が老朽化しているので、空調・照明をはじめ、ボイラーも効率がずいぶん落ちているだろうなと思っていましたが、その通りでした。ボイラーの調整によって省エネを図るプランを作成しました。

——— 小さな設備投資で大きな経費削減ができるようなプランが示されました。

福島社長 はい。無料省エネ診断とプラットフォーム事業のプランを合わせると、削減できる部分が16項目ほどあります。しっかり取り組めば相当なエネルギー量の削減、コストカットになります。まさに私が知りたかったことであり、欲しかった資料です。期待通りのものが出てきて、非常にありがたいと感じています。

佐古 複数の対策で省エネ効果量が被っている部分もありますが、提示した省エネポテンシャル以上の効果が期待できます。はい。無料省エネ診断とプラットフォーム事業のプランを合わせると、削減できる部分が16項目ほどあります。しっかり取り組めば相当なエネルギー量の削減、コストカットになります。まさに私が知りたかったことであり、欲しかった資料です。期待通りのものが出てきて、非常にありがたいと感じています。

福島社長 早速これを生かしていこうと、まずは組織づくりに着手しました。4月からは全社一丸となって、取り組みをスタートします。PDCA(P=企画 D=実行 C=評価 A=改善)がしっかり根付くようにしていきたいです。

——— 設備だけでなく、組織などソフト面も変えていくということでしょうか?

福島社長 この1年半の間に、組織づくり、リーダー会を通じて各責任者に話をするなどの指示系統や、意思疎通のルールを定めてきました。省エネの取り組みもスムーズに進んでいくと思います。

前田 次期に整備をご提案している「管理標準」が、まさにそのマニュアルとなるものです。組織の管理体制などもその中に入ってきます。その重要な部分を支援させていただければと考えています。

佐古 組織は、人も変われば役割が変わることもあります。例えば、エアコンの設定温度を決めておけば、それを実施するのは社員であり、チェックをするのが責任者です。実行力のある自立した取り組みを支援するのがプラットフォーム事業の役割です。お客様が増えると、省エネ策を実行しづらい場面もあると思いますが、それなりにできる方法をご提案できると思います。

福島社長 そうですね。PDCAの考え方で、状況に合ったやり方に変えながら進めていかねばなりませんね。最終的には私がいなくても回る組織、リーダーが変わっても回る組織にしていかなくてはと思っています。

佐古 この目標が達成できれば、次の目標を立てて取り組むことができます。トップの方の決断と実行力が重要ですが、福島社長の深いご理解と実行に向けた強いお考えがあるので、大丈夫だと思います。2019年度も継続して支援させていただきたいと思っています。照明やエアコンなど検討すべきことがありますので、今後も当社のノウハウを生かしたご提案ができると思います。

福島社長 それはありがたいです。白熱球をLED電球に変えるなどしてきましたが、まだ余地がありそうですね。

佐古 我々のプラットフォーム事業では、一番エネルギーを使っているものにメスを入れること、それからお金をかけずにできることを考えるようにしています。
集客してコストを削減する、「儲けにつながる省エネ」を一緒に進めて行きたいと思っています。

福島社長 設備投資をするのはなかなか難しいですが、それ以外の部分で結果を出していかなくては。計画を実行し、チェックして見える化すれば、やりがいが出てくると思います。

佐古 プラットフォーム事業は来年も予算化されていて、高知県内では昨年度、宮地電機が公的な機関として認定されています。来年度も国としても中小企業にこの制度を使ってもらって、省エネを進めようとしています。税制優遇制度や補助金についても、新しい情報を入手し、お客様にご案内していますので、そちらでもお力になれればと思います。

——— 社員一丸となって進めるという、福島社長の姿勢は素晴らしいと思います。社長は「はるのの湯」のさまざまな改革を進め、新しい風を吹き込んでいらっしゃいますが、ランチのクオリティーも高く、人気のようですね?

福島社長 たくさんの料理が並ぶ豪華なバイキングは、コスパがよいと喜んでいただいています。 いろいろ考えながらやっていますが、サービス業に就くのは初めてなので、今でも勉強中です。

——— 今後、「はるのの湯」をどのような施設にしていきたいとお考えですか?

福島社長 地域に愛される施設にしていきたいですね。地域のお母さん方を巻き込んで、地域の食材を取り入れた「おかみさんバイキング」をやれないかと思っています。
宿泊は合宿がほとんどで、世界各地からアスリートがやってきます。地域のみなさんにも応援していただき、その選手たちが活躍してくれたら嬉しいですね。

——— これからますます楽しみです。

福島社長 従業員の働く環境を守りながら、省エネも進めていきます。

佐古 そのお手伝いができることに、やりがいを感じています。今後ともよろしくお願いいたします。

○ 写真 宮地電機 ○ ライター 深田美佳 ○ 取材日 19.02.22