街の中のオアシス、グリーンに囲まれた癒しの空間
昨年11月、高知県庁・高知市役所から徒歩1分の場所にある、高知電気ビルの1階に「ボタニカルカフェ Konoha(コノハ)」をオープンした株式会社エコ様。関連会社の株式会社日東商事様との連携により、豊かな緑あふれるカフェが実現しました。都会で増えてきたバイオフィリックデザインを取り入れ、高知に新しい風を吹かせています。
お客様のご要望の中にビジネスチャンスがある
———この度は、宮地電機にご用命いただきありがとうございます。今回は、什器等のインテリアと、このカフェの特徴である植栽をお手伝いさせていただきました。エコ様がカフェの経営を手がけられるのは初めてのことと伺っています。まずはその経緯からお聞かせください。
山﨑取締役 ビルのオーナーである四電ビジネス株式会社様より、ビルの清掃を請け負っている当社(日東商事)に「カフェ経営に興味はありませんか?」とお声がけいただきました。我々にとっては初めての事業でしたが、チャレンジすることにしました。お客様のご要望の中にビジネスチャンスがある、というのが我々の考え方です。
———日東商事様は、ビルの清掃や設備管理をはじめとするビル総合管理、清掃用品・建物管理用品の販売、そして牧野植物園内のショップを経営していらっしゃいます。グリーンを主体とする「ボタニカルカフェ」の発想はどのように生まれたのでしょう?
山﨑取締役 日東商事副社長の発案です。都会でグリーンを主体とするオフィスや店舗が増えてきていることに着目しました。日東商事は、15年前に牧野植物園に「ボタニカルショップ nonoca(ノノカ)」、昨年5月に完成した新研究棟に「ミュージアムショップ サクラ」を出店しています。このように植物に関連した事業を展開してきたこともあり、当社の方向性に合致すると考えました。店名は社員から公募し、カフェのコンセプトと、先の2店舗の名前に通じるようなものにしようと、「ボタニカルカフェ Konoha(コノハ)」に決まりました。
時流に乗るバイオフィリックデザインで高知に新風
——— 今回、このような機会を得ることができて、私どもにとってはとても幸運なことです。担当した上甲さん、永易さんはどのような提案をしたのでしょう?
上甲 すでに家具も内装もグレーでまとめた、モダンな感じの空間が出来上がっていました。そこに、植栽を中心に癒しの空間を作りたいというコンセプトをお伺いし、什器の選定、それに合わせて壁面のグリーンと置き植栽、ソファー席とその背面の間接照明をご提案しました。施工が終わった後に、もう少し植栽を追加したいというご意向を伺い、吊り物の植栽を追加しました。
永易 マンションのエントランスやモデルルームの植栽は経験がありますが、グリーンをメインにした空間デザインは初めてのことでした。東京に視察に行きましたが、生木を使っていることが多いです。植物を扱う専門の業者にお願いすると費用がかかりますし、虫が発生する問題もあり、メンテナンスも大変です。素人の我々は無理をしない方がいいと判断し、すべてフェイクグリーンでとご提案しました。これだけ緑あふれる店舗は、高知では初めてだと思います。
——— 壁面のはめ込み植栽、棚の上、床の置き植栽、天井からの吊り物と、ふんだんなグリーンがとても心地よい空間です。もともとこの壁面パネルがあって、そこに植栽を入れたのですか?
上甲 はい。このパネルはビルの内装デザインとして、すでにあったものです。凹んでいるところに植栽を入れると決めて、凹んでいる部分に一枚一枚マスキングテープを貼って、遠目で見ながらバランスを確認しました。ソファーに座った時に邪魔にならない位置にということも考慮しながら、間接照明の光がうまく伸びるように、パネルの凹凸が美しく浮かび上がるように配置しました。
———当社は通常、照明設計ありきの形で進んでいくのですが、ここは初めから照明のベースがあって、インテリアの面から全体をご提案させていただくという普段とは違ったアプローチでした。照明についてはどのようなご提案をしたのでしょう?
永易 北側の壁面には、もともとソファー席はなく、壁の足元に器具がついていました。それを一旦外して、ソファーを置いてその背面に仕込んで壁面を照らすようにしました。外から見た時、グラデーションの明かりが映えることを狙いました。
山﨑取締役 ビジネスマンがゆったり座れるよう、また席数を多くしたかったので、壁面はソファー席にしたいとお願いしました。その時にこの間接照明をご提案くださって、これが非常に美しく、店の雰囲気がとても素敵になりました。
永易 この凹凸のある壁を生かすべきだと考えた時に、照明をどうするか、植栽をどう配置するか、ここに時間を使いました。グリーンの配置はまさにセンスの見せどころで、均等になり過ぎてもいけないし、光の当て方によって影の出方も変わってきます。かなり熟考しました。
———スポットの当て方にも工夫がありますね?
永易 スポットは3台で、グリーンの影が出るよう斜めから当てています。間接照明の明かりをメインにしているので、邪魔にならないようにしています。
多種多様な植栽をバランスよく配置するセンスの妙
———苦労したのはどんなところですか?
上甲 もう少しグリーンを増やしたいということで、追加の植栽をお任せいただきました。吊り物を入れようとなった時に、天井にどうやってつけようかと悩みました。ダクトレールがあったのでそれを使うことにしましたが、どこにどう配置するか、そのレイアウトが一番難しかったです。
山﨑取締役 この吊り物が搬入された時はずらっと一列に並んで下げられていて、これをどうするんだろうと思いました。施工時、別の仕事で現場を離れたあと、戻ってきたらすごくいい空間になっていました。
永易 あの状況をご覧になって、心配されたと思います(笑)。大きさ、長さ、ボリュームがまちまちで、どこにどう吊るすか、本当に苦心しました。入口に立った時に、壁面のグリーンに重ならないようにとか、奥の席からはどう見えるかとか、2人でいろいろな角度から眺めては調整し、何度も何度も行ったり来たりして位置を決めました。どこから見ても緑を感じられるよう、お客様の視線を意識しました。
———このランダムな感じがとても心地よいですね。こうやってお話していても、社長様のお顔に木の影が映り、木漏れ日の中にいるようなリラックスできる空間です。県庁・市役所が目の前にあり、高知新聞社様も入居するビルですから、ここでお仕事をされる方も多いのでは?
山﨑取締役 毎日ご来店いただく方も増えてきました。休憩はもちろん、商談や打ち合わせ、コワーキングスペースとしても活用していただける店づくりをしていきたいと思っています。飲食事業は初めてでしたので、社内で知恵を出し合い、作り上げてきました。宮地電機さんにもお知恵を借りながら、ハード面では非常によいものができたと自負しています。宮地電機さんにお願いして本当によかったです。
———コーヒーもいただきましたが、とてもおいしいですね。
山﨑取締役 もともとコーヒーは好きなので、味にこだわりました。豆のサンプルをたくさん取り寄せ、毎朝スタッフと試飲して選んだのが100年続く銀座カフェーパウリスタの「森のコーヒー」です。高知初登場となるニュージーランド発の「ALLPRESS ESPRESSO」のエスプレッソコーヒーや高知らしさをというところでは、土佐備長炭焙煎珈琲も入れています。深いご縁のある香川の「SUNNYSIDE FIELDS」監修のチョコレートドリンクもあって、幅広い層のお客様にお楽しみいただけると思います。
———「らんまん」で牧野植物園がにぎわい、来年は「あんぱん」の効果も期待されています。
山﨑取締役 そうですね。高知を訪れる方もまだまだ多くなると思いますので、挑戦を繰り返しながら、長く愛される店を目指していきたいと考えています。
———本日はありがとうございました。
ボタニカルカフェ Konoha(コノハ)
〒780-0870
高知県高知市本町4-1-24 高知電気ビル新館1F
TEL:088-802-5506
○ インタビュー 宮地電機 / 〇文章 深田美佳 / ○ 写真 釣井泰輔「ツルイスタジオ」 / ○ 取材日 2023.12.22