加藤様が設計されたデザインの振り幅に大変驚きました!
LE CANA MOTOBUを実際拝見いたしましたが、
とても素晴らしかったです。
「non rhetoric」とはまた違うベクトルで、
同じ建築家さんが手掛けられたと思えないくらいですね。

加藤様:

ありがとうございます。あの場所は、今帰仁城のお膝元で、本部(もとぶ)の石で石垣が組まれています。「土地のものを使いたい」という、オーナー様の熱い思いから始まりました。

山本担当室長:

建築前の下地が岩板なので、掘り出すのに何日もかかり大変でした。本部石はすごく硬いんですよ。

加藤様:

こちらは2つの土地でできており、大きな高低差がありました。この二つの土地を使って構図と建物の配置をどうするかをまず考えました。オーナー様がこの場所をお選びになられた理由は、やはりこの広大なviewがメインなので、建物の配置は特に時間をかけました。
太陽の角度も計算されているんですよね!

加藤様:

そうです。西陽って綺麗に見えるじゃないですか?本当だったら西陽は嫌がられてしまうんですけど、「この際思い切って開けよう」と、大きなピクチャウインドーを設けました。そして、綺麗なピクチャーウインドーになるよう、全ての大開口の窓の前に、天井からスライドさせた庇を設置し直射日光を遮りました。

山本担当室長:

夜は、その庇に対して下から光を当てています。そうすると、庇に反射した光がテラスを照らし、庇がふわっと浮いたようになってとても綺麗なんです。

時間が経つにつれ、だんだんと景色が変わってゆき、
どのロケーションも素敵でした。

加藤様:

ありがとうございます。大切なのは各々のプライベート感なので、大きい建物を一つ建てるのでなく、あえて2棟に分け、回廊で結びました。
その回廊にも大きな柱がありましたね。特徴的な柱で、「non rhetoric」を思い出しました。

加藤様:

はい。回廊の柱は「イヌマキの木」を使用しています。沖縄は雨風が強いので、建物の軒は低く造られており、その軒を支える柱としての役割です。実際に使用していたものを探そう、ということになり、現地の工務店さんが見つけてくださいました。
強いこだわりがおありだったのですね。回廊からつながってゆくお庭も拝見しましたが、フラットではなく、丘を活かした、歩くのにちょうどいいスロープになっていましたね。

加藤様:

お庭の部分は、ちょうど土地が二つに分かれている場所でした。「これは残さないと」と思いました。

山本担当室長:

最初は飛び越えなくてはいけないほど、段差がありました。立体的過ぎて、図面に起こすことが難しかったため、加藤さんは現地で、 何度も手と口を使い綿密に指示を出していました。
そのお庭からちょうどいい感じに海に浮かぶ島々を眺めることができます。今回の照明設計は太陽に寄り添っている、と感じましたが、山本担当室長はどういったところを意識されましたか?

山本担当室長:

このロケーションが一番ですからね。照明器具が邪魔をしてはいけません。この場所は夜景も素晴らしいんですよ。照明器具をたくさんつけると窓に映り込んでしまうので、間接照明を主体にして、後は必要なところに必要なだけ...それも天井にスリットを設けて光源を隠すなど工夫しました。心地よさを一番意識しましたね。
2Fのベットルームの読書灯も小技が効いていましたね。どのお部屋も照明器具が主張し過ぎていないのと、すべての窓にウッドブラインドが取り付けられていて、外光までもコントロールされているんだなと感じました。そして、何と言っても圧巻はエントランスの「木のシャンデリア」でした!

加藤様:

これは面白かったです。このリビングは、みんなで最後まで「何かしないとね」と考えていました。別件で、高松にある家具屋さんに立ち寄った時、偶然丸太を見つけたんです。

山本担当室長:

加藤さんから「いい木を見つけた!」と連絡があり、見に行くとドーンと大きな丸太がありました。「この木を吊りたいんだけど」と言われ驚きました(笑)。照明器具に使うのだから、軽い木なのかなと思うのも束の間。重くて重くて...。「どうやって運ぶの?」と疑問でした。

加藤様:

この木は、いびつな形をしていて、さらに空洞の丸太なので加工ができない上に、持ち運びも困難。そこで「この木を二つに割ろう!」と考え製材所に行き、イチかバチかで切りました。切る瞬間は、ドキドキしみんなで写真や動画を撮りました。心配もさることながら、スパッと綺麗に切れまして...衝撃的でした。
「丸太を照明器具に」という発想には驚きです。どういったイメージを描かれていたのですか?

加藤様:

イメージは「暖炉につながる煙突」です。
なるほど。だから天井を掘り込むことにこだわられたのですね。

山本担当室長:

天井はすでにでき上がっていたのですが、建築屋さんが「それ埋め込みたいんやろ?」と言ってくれ、早々と段ボールで型を取ってくださいまして。最終的には無事に取り付けることができ、現在は空間によく馴染み、溶け込んでいます。

加藤様は現場に合わせ、自在に世界観や建築手法など変えられていて、常に新しい表現を追求なさっているように感じますが、弊社山本をいつもご指名いただいている理由を教えていただけますか?

加藤様:

こんな風にしたい、というイメージを「打てば響く」で応えてくれます。材料と空間を山本さんに伝えると、それ以上こちらからは何も言っていないのに、角度や色温度など、ピタッと当ててきてくれるんですよ!

山本担当室長:

私の持論ですが、優れた建築家の方は、全てを指令するのではなく、一緒になって考えさせてくれる伸びしろがある。そこが、やりがいでもあるし、さらに頑張ろうという気持ちになり、相手をリスペクトすることができるんです。

加藤様:

そういった意味で山本さんとは「ああしよう!」「こうしよう!」と一緒に考え、苦難も共にし、良いデザインを造り上げてゆく上で、とても良い関係です。
まさにお二人の「あうんの呼吸」ですね。今回の取材で、太陽光、夕陽、月光、星あかりが外せないアイテムである、このLE CANA MOTOBUでは「主張する光」と「引く光」のバランスがどちらも絶妙で、心からの心地よさを感じることができ、とても勉強になりました。

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