クリスマスディスプレイ2018

クリスマスディスプレイ2018

宮地電機株式会社 ラ・ヴィータ高知店の場合 ラ・ヴィータ
1993年の誕生から25周年を迎えたラ・ヴィータ高知店。 電車通りに面したウインドウは、宮地電機からのさまざまな提案を形にするスペースです。 毎年11月中旬になると、人々の目を楽しませる、にぎやかなクリスマスツリーとウインドウディスプレイが登場します。 オープン当初から自社制作を続けてきたウインドウディスプレイについて、発信者としての思いと制作秘話を聞きました。
ラ・ヴィータ外観とディスプレイ
2018「イタズラおばけの本屋さん」
ディスプレイ担当者 菅野乃美
インタビュー
今年もクリスマスディスプレイが冬の街を美しく飾っていますね。

菅野課長

通常は当社の照明やカーテン、ウエディングなど、 各部門のその時期のテーマに沿ったディスプレイを行っていて、2ヵ月に1度変更しています。 毎年、11月中旬からはクリスマスをモチーフにしたディスプレイになります。
毎年趣向を凝らしたデザインで街行く人々を楽しませてますね。

宮地社長

LaVitaができた最初の年は、私が自分で考えて自作しました。 LaVitaの包装紙を使って大きな箱を作り、そこにプロジェクターで動画を流し 「LaVitaが提案するクリスマスプレゼント」を映しました。ですが、昼間は全然動画が見えなくて、大失敗でした(笑)。 その後も、社員が知恵を出し合って自社制作を続けてきました。
自主制作にこだわっているのはなぜでしょう?

宮地社長

宮地電機はメーカーではなく、メーカーとお客様をつなぐ物流の会社です。 オリジナリティーが出しづらい業種ではありますが、当社は自分たちで考え、 自分たちが動くことを大事にしています。ディスプレイを通じて我々が生み出す付加価値を感じ、 喜んでいただきたいと思っています。
画像 代表取締役 社長 宮地 貴嗣
新しいディスプレイ

通常のウィンドウディスプレイ 左から「森のなかのウエディング」「中嶋邦夫 In The Garden」「#結婚式準備#始めました」

過去のディスプレイ
宮地電機の思いをしっかりと語るディスプレイなのですね。菅野課長が担当されてどれくらいですか?

菅野課長

私が入社し、担当するようになって20年になります。 クリスマスディスプレイは、元々は1年の集大成として、レストランを含むラ・ヴィータの全部門がコラボする形をとっていました。 しかし、ウエディング、カーテン、照明、ワインなど、あらゆる商品を一堂に集めてクリスマスを表現することは難しく、 商業的になってしまっていました。そこで、ある時、当時社長だった宮地彌典会長に「お客様への感謝を込めて、 地域のみなさんに楽しんでいただけるクリスマスらしいディスプレイにさせていただけませんか?」と提案しました。 それを認めてくださり、以降は毎年異なるデザインやカラーでクリスマスを彩っています。
すべて自社で製作しているのですか?

菅野課長

デザインと設計図面は私が担当し、 大きな部材の製作や設置は業者さんにお願いしています。イルミネーションの材料や装飾用の小物の手配は当社で、 実際の設営は当社のスタッフと業者さんとで行います。
菅野課長がコンセプトやデザインを考えているとのことですが、ディスプレイについて専門知識や経験はどうですか?

菅野課長

高校卒業後、武蔵野美術大学で空間演出デザインを専攻し、 ディスプレイやシニックデザイン(舞台美術)を学びました。卒業後は東京の俳優座劇場に就職し、 舞台美術のデザイナー兼営業で、テレビ朝日常駐係として勤務していました。 コンサートやプロモーションビデオの制作にもかかわりながら9年間勤め、Uターンして高知に帰ってきました。 それから宮地電機に就職し、ウインドウディスプレイを担当するようになりました。
クリスマスディスプレイのパースと写真

宮地社長

専門的な知識と技術がある菅野課長が入社してくれたことで、 とてもクオリティの高いディスプレイができるようになりました。
まさに本領発揮というところですね。20年間ずっとですか?

菅野課長

長男の出産時に一度だけ課内のスタッフに担当してもらいましたが、 それ以外はすべて私がプロデュースさせていただいています。私は結婚して一度宮地電機を退職し、 再度上京して7年間東京で暮らしていました。その間も外注という形で宮地電機からお仕事をいただき、 クリスマスディスプレイを担当しました。宮地会長から「退職してもディスプレイ担当は菅野だよ」と言っていただき、 感激すると共に身の引き締まる思いだったことを憶えています。 その後、再び高知に帰り、宮地電機に再就職し今に至ります。
なるほど。高知にはないような、都会的なセンスが光るのもそのせいでしょうか?

菅野課長

そう言っていただけると嬉しいですね。 「クリスマスイルミネーションが生み出す"ときめき"、"非日常感"を四国にも!」という気持ちがあって、 それは今も変わりません。
20年の間に変化はありましたか?

菅野課長

まず、電球が変わりました。昔は「ムギ電球」という小さな白熱球を使っていました。 消費電力が大きい上、長時間点灯すると熱くなるので発火の危険性がありました。2005年頃からLEDが出始め、 明るく、色のバリエーションが豊富な上、熱が少ないので布や紙などの素材と一緒に使っても安全で、表現の幅がぐっと広がりました。
クリスマスディスプレイ2018

伊藤室長

LEDは制御が可能なので、光の色を変えたり動かしたり、いろいろなことができます。 以前は白やブルーなど光を使い、制御のプログラムを仕込んで、色を変化させたりしていましたが、 今は人の心を落ち着かすオーソドックスな光に戻ってきましたね。

菅野課長

そうですね。やはり光の美しさやあたたかさを表現したいという、原点に戻ってきました。
その間、経験値もずいぶん上がったのでは?

菅野課長

はい。最初は試行錯誤の連続で、今思えば無駄な工程がたくさんありました。 当時はインターネットもありませんから、何もかも手探りでした。例えば「巨大ツリーの作り方」も、 自分たちで一から考えなくてはなりませんでした。骨組みを作り、すき間が見えないよう白いサテンを巻き付け、 さらにキラキラのオーロラシートをくしゃくしゃにして貼り付け、その上に金色の枝を縛り付け、 さらにその上に木の葉やガーランドを付けてと、丁寧にやるあまり工程が多くなり、 時間がかかっていました。ですが、そこまでしなくても見栄えのよいやり方があることがわかってきて、 今はかなり工程を減らしてコストも削減しています。 経験によって学ぶことも多く、長年続けてきた中で得たノウハウは貴重な財産です。
画像 情報開発室 取締役室長 伊藤武史
画像
制作に取り掛かるのはいつ頃ですか?

菅野課長

「そろそろ考えないと」と思い始めるのは9月頃で、 徐々にアンテナを張り、決め込んでいくのは11月になってからです。 クリスマスディスプレイの公開日が決まっているので、 その1週間前に設計図を描いて業者さんに発注しなくてはなりません。 11月初めの1週間でプランを固めて図面を起こします。
テーマはどうやって決めるのですか?

菅野課長

それなりにアンテナを張って情報収集をしていますが、 おしりに火がつくと集中力が増しますね。ふとした場面でパッとひらめきます。CMの片隅に見えた色や形、 車で走っている時に目に入ってきたカフェの光、本で見かけた写真などなど。そこから一気に世界観が膨らんで、 作品になっていきます。息子が夢中になっているものがヒントになることもあります。
2018年バージョンはかわいいおばけたちが登場していましたが、どのようにして生まれたアイデアでしょう?

菅野課長

最初に、李朝アンティークの素敵な鳥かごに出合ったことが始まりです。ひと目見て気に入り、 まずそれを購入しました。その中に、鳳凰や孔雀のような鳥がいて、極彩色の光を放っているようなイメージを思い描いていました。 ですがある時、このLEDのおばけと出会い、一気にイメージが広がり、閉じ込められた腹いせに次々といたずらをするおばけのストーリーが出来上がりました。 いつか見た、天井から洋書がぶら下がっている一枚の写真が脳裏に浮かび、本屋さんのシチュエーションが決まりました。
おばけたちの会話が聞こえるようで、思わず見入ってしまいました。

菅野課長

イメージを形にする時、前回とのふり幅を考えます。テレビの現場では、 「引き」で絵になるもの、「寄り」で充実するもの、両方が成立しなければなりません。 ディスプレイも同じで、遠くから眺めた時の美しさやカッコ良さ、中を覗き込んだ時の充実感、 どちらもなくてはならないのですが、主軸をどっちに持ってゆくかを考えて作っています。 今回は昨年の5つの窓を作るデザインを踏襲し、柱の上にブラケットを付けて建物の外と中の明かりを演出しています。 思わず中を覗きたくなる視線導入の効果があり、5つの方向からのアプローチを変えることもできるデザインです。

伊藤室長

前回、私は設営に参加できなかったのですが、 出来上がりを見て「これはすごい!」とおどろきました。ウインドウにさらに窓を作る発想は素晴らしく、 ブラケットの照明も加わってとても素敵な雰囲気が作れました。
そういう仕掛けがあったのですね。実際の製作時間はどれくらいですか?

菅野課長

今年は、夜の9時半には出来上がるという、異例の速さでした。 あたたかく、作業がしやすかったこともあると思います。
以前はどのくらいかかっていたのでしょうか?

菅野課長

夜中の2時~3時までかかったこともありますし、翌日の開店時間に間に合わなかったこともあります。

伊藤室長

寒い中、現場監督のOKが出るまで、いつ終わるともわからない過酷な作業です。(笑)
なかなか大変な作業ですね。

菅野課長

それでも毎年、作業中に「今年もやるんですね。楽しみにしています」と 声をかけてくださる方々がいらして、とても嬉しいですね。最近はSNSでも反響があり、 InstagramやFacebookを開くと様々な方が「素敵だった」「今年のイイね~!」とアップしてくださっていました。とてもやりがいを感じています。

伊藤室長

ウエディングのお客様にも、前撮りや、 披露宴の後に撮影したりと人気の撮影スポットになっています。レストランで食事をされたお客様のテンションが上がったり、 道行く方々が足を止めてくださるのを見るのも嬉しいですね。

宮地社長

以前はプランを見せてもらったりしていましたが、今は全幅の信頼をおいてお任せしています。出来上がったのを見ると、やはりウキウキしますね。 会合などで「今年もできましたね」と声をかけていただくこともあり、定着しているのだと改めて気づきます。
クリスマスディスプレイ2018
四半世紀にわたる継続は、素晴らしいことですね?

宮地社長

始めるのも大変ですが、続けることも大変です。業績が悪い時には、「今年は見合わせよう」と決議したこともありました。

伊藤室長

その時は、私と菅野が社長に「どうしてもやりたいです!」と直談判しに行きました。

菅野課長

ブランドイメージとして定着していますので、 それをやめてしまうと「会社に元気がない」ということになってしまいます。会社の元気をアピールすること、 そして非日常感を演出して街を活気づけることが、クリスマスディスプレイの役割だと思っていますので、 経費を抑えつつ継続することで社長にご理解いただき応援してもらっています。 結婚式やクリスマスディナーご予約の決め手の一つになることも期待しています。
街の人たちの期待も大きく、宮地電機ならではの「光の楽しさ」を提案する絶好の機会です。イルミネーションやディスプレイを商品化するお考えはありますか?

宮地社長

実際にお声がけいただいて、設計・施工した現場もいくつかあります。
クリスマスディスプレイ他パース

菅野課長

お客様がイメージされるイルミネーションにプラスしつつ、 断然幅が広く、よりその場に合った光、より美しく見せる光をご提案できると自負しています。 ぜひご相談いただきたいですね。
ウィンドウディスプレイは、まさに宮地電機さんの強みの部分を表していますね。

宮地社長

かつてここには宮地照明があり、 たくさんのペンダントライトが吊るされていました。 それを知っている人たちが「あの光が好きで、この会社で働きたいと思いました」と当社の入社試験を受けてくれた時代があります。 今の子どもたちにとっても、このディスプレイが宮地電機に興味を持つきっかけになれば嬉しいですね。

菅野課長

私も学校帰りの電車から、宮地照明の光を見て「素敵だなぁ」と思った一人です。クリスマスも大好きで、 高知にはそれほど大規模なイルミネーションはありませんでしたが、 ちょっとした光だまりにわくわくしました。その思いを忘れることなく、未来につないでゆきたいですね。
クリスマスディスプレイ2018

設営風景(写真 宮地電機) 18.11.14

・空間演出デザイン【宮地電機HPコンテンツ イベント・演出】

○ 写真 釣井泰輔 ○ ライター 深田美佳 ○ 取材日 18.12.10

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