新社屋のご完成おめでとうございます。外観は鉄骨の工場風ですが、中に入るとハイセンスな木造社屋が内包されており、驚きました。こちらの建物のコンセプトを教えていただけますか?

はい。弊社は昭和21年から須崎市で木工業を営み、机や椅子を作っていました。色々な変遷を経て昭和57年、高知市高須にホームセンターマルニ1号店を開店しまして、後にハマートやブリコなど、現在は19店舗を展開するに至りました。
そして、弊社は大きく4つの事業として、1:住宅事業、2:ホームセンターの運営、3:イエローハット、4:マルニガーデンやアシストファーム等の専門店を展開しております。
ところが、この4つの事業の事務所は県内に散らばっており、会議をするにも一苦労でした。そこで、プレカット工場として使用していたこの場所へ新社屋を作り、皆で集まることになりました。後に出てきた案が「ハウスインハウス」でした。

ハウスインハウス!なぜ、この建物を活かし、ハウスインハウスという手法を取られたのでしょう?

私が勤めていたイエリノ(※)では古い家を直す仕事をしていたので、古い建物を活かすというのは、自然な発想でした。この工場を見て、自分たちに必要な面積や容積を踏まえ手法を考えた時、この工場は広すぎると思いました。一度は、この工場を綺麗にして...とも考えましたが、コスト面のバランスや機能的な要素を取り入れ、考えを煮詰めた時に、「ハウスインハウス」の発想が生まれました。
そして、色々な事業体が集まってくるので、1つの工場に3つの箱(エリア)を作ろう!社員が心豊かに仕事ができるよう、家を感じられるような、キッチンやフリースペースを作ろう等の発想が生まれました。
何よりの特徴は、会長室・社長室含めオールガラス張りにし、皆の動きが分かるようにしたことです。ただの独立した「周りから見えない箱」にしてしまったら集まってきた意味がないので...

御社は、木造にこだわっていらっしゃいますので、プレカット工場跡地ということも意味をお持ちだったのでしょうか。

はい。こちらがプレカット工場だった頃の鉄や錆、床のシミや壁の穴、全て味として残しています。あちらの安全第一の看板も、他社のものだったら取り外していました。しかし、これらは歴代の先輩方が築かれた歴史の一部なので、色濃く残してゆきたいですね。

最初、間城さんからお話を伺った時、「ハウスインハウス」という言葉がいまいちピンと来なくて...(笑)。形ができてきて、イメージパースを拝見した時に、「こういうことか!」となりましたね。

外側の工場内は自由に行き来できるオフィス空間―社長をはじめとする、社員の皆さまのオープンな姿勢が伝ってまいります。

オープンなガラス張りなものですから、書類をチェックしていたり、考え事をしているときに声をかけられることが度々あります。でもやはり、各幹部の方たちと電話ではなく、直接目を見ながら話ができるのはとても良いですね。今までにない知恵を出し合い、4つの大きな事業をさらに横つながりで強化し、お客様により良いサービスができるようにしたいですね。

今までは、打ち合わせをするのにも、お互い時間が合わず距離感を感じていました。この社屋ができたことで、顔を合わせて話ができスピード感も生まれました。前向きに事が進んでゆくのを実感しています。

4つの事業体が集結することで、さらに良い展開が生まれますね。宮地電機は、照明で携わらせていただきました。ありがとうございます。ダイニングに飾られている、非常にシンボリックなペンダントライトがとても印象的です。

あちらのペンダントライトは、FLOSを使用しています。間城さんに選定していただきました。

こちらの、ペンダントライトだけ見ると高価な照明ですが、ほかの照明を機能的に抑え、ローコストにすることでバランスを取っています。シンボリックな照明を一部に使い「デザインを締める」という手法です。...秋山さんにはご無理を言いました(笑)

フリースペースには、いい照明を置き、会長・社長・社員のワークスペースはリーズナブルな照明を使用しています(笑)

デザインと機能のメリハリをつけることでバランスを取っていらっしゃるのですね。そして、緑の鉄柱に対して当てているスポットライト。角度が絶妙で、柱面をピタッと照らしていますね。

こちらのスポットは秋山さんと「あーでもない、こーでもない」と鉄柱を何度も照らしました。

やはり、カッコいい空間にしたいじゃないですか。もう少しここをこうして...等、意見を出し合い、間城様に「これイイね!」と言われると満足でした。ただ照明器具を納入し、電気工事店さんが取り付け「あっ、点いたね」では、うちの存在価値はないと思っています。

秋山課長は、デザイン面を含めこだわりが強い人間ですので、おそらくノリノリでこちらの現場にお伺いしていたと思います。

はい。こちらの現場にお伺いすることがとても楽しみでした。照明の基本構想は、間城様が打ち出してくださっていましたので、明るさや、色温度、角度などの詳細をふたりで詰めてゆき、少しづつ進めました。

秋山さんには、自然と言いたいことが分かっていただけたなと思っています。

全般照明のダウンライトをはじめ、スポットライト、廊下の間接照明など、照明の混在の仕方が非常にバランスが取れており、そしてきれいにまとまっていて、「プロとプロの技が光っているな」と感じました。

間城さんは、もちろん照明だけではなく、設計、デザインからはじまり、インテリア、エクステリアと...建物全般で一切妥協のないお仕事をされており、本当に頭の下がる思いでした。更にいろいろな価値観を持った方が集まってくるので、「本当はこうしたいけど、ここを使う方たちがこれで良いのか...」とすごく悩まれ、神経を注がれていました。

おっしゃる通りですね。建築関連・ホームセンター関連・車関連・ペット関連など、様々な業態の人間がいますからね。それをうまく調和させてくれたと思います。

色々と要望もありましたが、それをすべて聞けばよいという訳ではありません。「咀嚼して、プロとして何を生み出すか」が大切だと思っています。その中の照明計画においては、これで本当にいいのか、自分の思うようになるのか?などの判断にプロの力を借りています。その時、自分の思っていなかった答えを出してくれるのが秋山さんなんですよ。頼りにしています。

社内には間城様だけでなく、素晴らしいセンスをお持ちの方が綺羅星のごとく揃っていらっしゃる印象があります。個人的な感想ですが、御社のホームセンターをはじめとする店舗は、数年前から格段にデザイン性を高められたように感じておりますが、何か社内で意識改革や方向性の変更がおありになったのでしょうか?

ホームセンターの店長やバイヤーには、デザイナーの様な感性は無いですが、「いつも一緒の店作りをしていたら、ワクワク感が無い上に楽しくない。そしてお客様に飽きられてしまう。だから、商品の並べ方や見せ方を変える。」という話を常々口にしています。
今までは同じバイヤーが商品仕入れをしていましたが、現在はマルニ・ハマート・ブリコそれぞれの担当バイヤーを分けました。 そうすることによって、3つのブランドの特色ある商品の仕入れになっています。弊社、会長もよく「どこを切っても同じ、金太郎飴になるのはやめよう」と言っており、その言葉が社員に浸透し、店作りをする際の意識付けになっていると考えています。

高知県には、ホームセンターが大好きといってくださる方が多くいらっしゃいます。私も、小さい頃はホームセンターに通い、色々作る少年でした。そのころから、マルニにはないけど、ブリコにはあるかな?と店を使い分けていました。私の行きつけだったブリコ吉田店には、「こんな加工がしたいんだけど...」なんて相談に乗ってくれるおじさんがいましたね(笑)

ネジを買うならブリコ!お花買うならマルニガーデン!と地元の皆様に、
face to faceで商品を提案し、用途に合わせて使い分けていただく。そんな店になりたいですね。

ずっと伺っていたいお話ばかりでした。本日はありがとうございました。

○インタビュー:宮地電機 情報開発室 広報 菅野乃美
○写真:釣井泰輔 HP「ツルイスタジオ」
○取材日:2019.10.7

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