host
今回は、ご縁をありがとうございます。久保様からお話をいただいた時には、すでにご自身で改装を進めていらっしゃいました。改装前のお店も素敵でしたが、今回はなぜ改装を考えられたのでしょう?
guest
この店は、オープンしてもうすぐ3周年を迎えます。窪川に本店があり、こちらは店長を雇用し、すべて任せる考えで出店しました。しかし、窪川の店を閉めて高知に拠点を移すことにしたため、本店にあった鉄板台を全部ここに置くことしたんです。
host
なるほど。以前のお店はテーブルが高く、ハイチェアを使用しておられましたね。レクリントなど、デザイン性の高いペンダント照明がとてもよく合っていて、素敵な空間でした。照明器具の高さや明るさもよく考えられていると思いましたが、あの照明設計はどなたが手がけられたのですか?
guest
内装も照明も自分で考えました。
host
そうなんですね!とてもセンスのよいお店だなぁと思って拝見していました。
guest
僕自身はガチャガチャした雰囲気が好きなんです。こっちは人に任せるつもりできれいめに仕上げていたのですが、僕がやるとなるとちょっと雰囲気が違ったので変えたいなと。今回も自分でやっていたのですが、正解か不正解かわからなくなってしまって。
host
最初に伺った時には、ダクトレールにつけたスポットライトをベースにして、鉄板の上に光が当たるように照明を工夫されていました。その後をどうしようかと悩んでいらっしゃいましたね。
guest
鉄板の上の料理にスポットがあたるようにしたいと思っていたのですが、お客様から「暗い」「お互いの顔が見えない」と言われて。急遽スポットを追加したりしました。
host
まさに、「暗い」ことに悩んでいらっしゃったのですが、私はむしろまぶしく感じました。それは磨き込まれた鉄板からの反射によるものだと判断し、スポットをいくつか外すことをご提案させていただきました。
guest
鉄板がステージに見えるよう光を当てたいという思いがありました。焼肉店の、網の真上に排気ダクトと照明がセットになった装置の見え方が頭にありました。光が広がり過ぎないように、鉄板の料理に集まるようにというのが、なかなか難しかったんです。
host
照明は、対象物の素材と反射率が非常に大事です。ダイニングテーブルでも、ツヤ消しかツヤ有りか、白木かマホガニーかでも違ってきます。ましてや反射率の高いステンレスは照明のプロであってもかなり難しいことです。今回は、鉛直面の照明や間接照明、バウンド光で環境を作っておいて、鉄板には必要最小限の光を当てること。真上からの灯りよりも横からの光をとご提案させていただきました。
guest
棚の照明を作っていただき、これがとてもいいです。僕は、所ジョージの世田谷ベースが好きなんです。この壁がのっぺりしているのが嫌でゴチャゴチャ飾りたいと思っていました。灯りが入ると本当にかっこいいですね。
host
この反対側の壁にも、久保様自身が手掛けられた小物のディスプレイとそれを照らす照明が仕込まれており、最初は「これと同じように」とおっしゃっていましたが、同じ照明にせず異なるアプローチでご提案させていただきました。
mori
棚照明も、棚板の上を照らすやり方と棚下を照らすやり方がありますが、ビールの瓶を透過する光がよいのではないかということで、今回は棚板の上側を照らす方法を選びました。瓶の後ろ側にランプがあれば光源が直接目に入ることがありません。棚の下につけると、ランプが見えないようにするためのカバーが必要になるので、この場合は適していません。
host
ランプはLEDのテープライトですね。
mori
ある程度パワーがあって、調光ができるランプを選びました。我々提案する側と使う側のお客様とでは、どうしてもイメージしている光に若干の差があります。色については打ち合わせを重ねていけますが、明るさについてはやってみないとわからない部分が多いので、調光タイプにしました。
guest
このスペースは、初めてのお客様が「わぁ!」と言って喜んでくださいます。特に若い女性のお客様に好評です。
host
ここは女性を美しく見せる灯りで満たされているからだと思います。真上からの光はシワやくすみを目立たせるので、女性は本能的にその光を避ける傾向にあります。
guest
なるほど。店内、いろいろなところに光を仕込んでいますが、お客様の反応が良いとうれしいですね。
host
入口にある大きな木も特徴的です。
guest
あるお店で、チカチカ点滅するイルミネーションを見て、コールマンにもアレ欲しいなと。つける所がないなぁと思って相談したら、工務店さんがデザインコンクリートで木を作ってくれました。
host
大きな木のイルミネーションは、私もお手伝いさせていただきました。1球ずつバランスを見ながら、シャンパンツリーの形に仕上げていきました。この久保様のアイデアはとても素晴らしく、反対側のLaVitaから見ても「何だろう?」と思わせるキャッチーな灯りで、とても印象的です。入口付近の壁面が光っているのも人目を引きますよね。
mori
鉛直面をライトアップするには、スポットライトだとまだらになってしまいますので、均一に照らすために長いライトを1本使ってコーニス照明という間接照明の手法で照らしています。
guest
今は木の長椅子の背板に取り付けていますが、まもなく革張りのソファに変えますので、また違った印象になると思います。
host
お店を入口から覗いた時、オレンジベースの光の中に、ネオンのように映えるブルーの光がとても美しく、人の視線を集めるのに効果的です。
guest
冷蔵庫に青い光を入れるのが好きなので、とても気に入っています。改装後はリピーターのお客様も増えてきて、店の雰囲気やスタイルを好んで来てくださるお客様が増えたのではないかと思います。
host
それはうれしいことです!
guest
今はいいと思ったものも、飽きてくるとまた次のことをしたくなる・・・・。宮地電機さんに手を入れていただいたところがグっとよくなったので、それ以外のところが野暮ったく見えてきているところです。またお願いしますね。
host
久保様の終わりのない探究心とセンスの良さ。これからがますます楽しみです。

○ 写真 釣井泰輔 ○ ライター 深田美佳 ○ 取材日 19.01.25

PAGE TOP