毎夏開催されるイベント「夜の動物園」のため、 ペンギン舎の水中照明をLEDで演出されました。
徳島市都市整備部 とくしま動物園園長 歌川康司様

一番奥だから、明るくして集客。

———以前からLED化をご検討されていたのですか?

歌川様 このとくしま動物園は徳島市都市整備部が運営しております。そしてご存知の通り、徳島はLEDに力を入れています。ですので、ゆくゆくはLED化してゆきたい、との思いはございました。しかしながら、施設自体の老朽化などもあり、国から出る交付金で改修する優先順位はおのずと決まっていました。一気にLED化は難しいですが、徐々にチャンスを見つけて取組んでいるところですね。

———今回はペンギン舎の改修に?

歌川様 はい。このとくしま動物園では毎年9月~10月に《夜の動物園》というイベントを開催しています。こちらでペンギンの餌やりのパフォーマンスが人気なのですが、同施設に改善したい箇所もあり、リニューアルすることとなったのです。

———具体的にはどのような?

歌川様 ペンギンには活きたアジを与えていました。ペンギンが泳いで捕食する姿が好評だったのですが、窓が小さかったため一度に50人ほどのお客様にしかご覧いただけなかった。そこでプールの前面をアクリルで囲いたい、水位を上げてペンギンが自在に泳ぎ回る姿をご覧いただきたい、というニーズが生まれました。照明は、一番奥だから明るくして集客したいと。そこでLED導入となりました。

(左)日中のペンギン舎。前面アクリルの大きな水槽が、外光を取り込み、とても明るい。
(右)日没後のペンギン舎。水中に設置したLED照明は過不足無い照度を保ち、ペンギンの活動にも悪影響を与えない。

昼と違う、夜の状態を見て欲しい。

———この自然に囲まれた立地条件ですと、夜はかなり暗いのではないですか?

歌川様 そうですね、確かに暗がりになります。しかし、全てをただ明るくしたのではつまらない。昼と違う、夜の状態を見て欲しいからスタートした企画です。わざと見にくくするシーンを作ったり、赤いライトで少し怖い演出をしてみたり…。夜ならでは、の楽しさを味わって頂くためにバランスを取っています。

———他にはどんな工夫がなされているんですか?

歌川様 LEDの動物オブジェやLEDのアーチを設置しています。お客様にも喜ばれて、写真撮影のスポットにもなっているんですよ。毎年このようなLEDは増やしています。今後も増やしてゆきたいですね。

ペンギン舎の夜は、明るすぎてはいけない。

———夜になってみると、ペンギン舎の周りは非常に意匠的な照明のように感じます。

歌川様 はい。もっと煌々と明るくする方法もあったのかもしれませんが、実は、ペンギンは日中に活動する動物で、夜行性ではないんです。ペンギンも夜は見えづらいので、あまり動かなかった。それが今では"お腹が減ったら食べる"という感じですが、意外と泳いでくれた。だからと言って、明るくしすぎるとペンギンの健康状態にも関わります。カメラのフラッシュもご遠慮頂いているくらいですので。

———難しいところですね。

歌川様 ですので、照度はどのくらいが適正なのか、など心配していました。しかし、調度良い状態に整いましたのでペンギンにもさほど負担をかけずに多くのお客様にも楽しんで頂いております。

———今後のLED導入に関しましては、いかがお考えですか。

歌川様 随分安くなったとはいえ、まだ少し高いと思っています。動物園として、まずは何より動物の健康が第一です。そして施設だけではなく、設備も傷んできていますので、徳島市の厳しい経済状況の中で優先順位を考え、バランスを取りながら進んでゆきたいと思います。

担当者のひとこと

とくしま動物園のペンギン舎をリニューアルされる、というお話は、以前よりお付き合いのある中川建築デザイン室様より教えていただきました。数年前より、とくしま動物園では、新発見をテーマとして「夜の動物園」という取り組みを始められています。昼間とは少し違った夜の動物園の雰囲気を楽しみながら、動物たちの様子を観察していただきたい、というお考えからです。 今では、大人気のイベントとして定着しています。ペンギンは、実は昼行性の動物で、夜行性ではありません。そのためLEDの光で、ただ明るくすれば良いわけではありませんでしたので、そのバランスの調整にはとても気を遣いました。

施設・住環境営業部 徳島施設・住環境営業課 課長 阿古目 省三