厄除けの寺として有名な四国第23番霊場「薬王寺」のある美波町(旧日和佐町)。薬王寺の急な石段のおかげで、山間の町というイメージがありますが、徳島県南部総合県民局美波庁舎のすぐ南側まで入り江が迫っています。来たる南海トラフ地震での津波災害から、7,000名(美波町全体)を優に超える地域住民はじめとする“その時その場所にいる”方々の命を守るため津波域災対策としてLED防災ライトを導入されました。

青木主任 美波庁舎には『津波減災部』という部署があり、日頃から積極的に津波減災教育に取り組んでいます。この美波町(日和佐地区)は海と山に囲まれており、南北の高低差が非常に大きいところです。阿波室戸シーサイドライン(JR牟岐線)の線路を挟んで西側に住んでいらっしゃる方々は、薬王寺やその裏山に避難されると思います。一方、東側。特にこの美波庁舎から海側に住んでいらっしゃる方々は、この庁舎の屋上に避難されると思います。

———先ほど屋上から拝見しましたが庁舎の東には「こども園(幼稚園・保育所)」などが隣接しているんですね。

青木主任 はい。ですからお子さんを預けているご家族の方々にとっても非常に重要な避難所になっています。子どもたちにも、ここが避難場所だと憶えてもらうため、毎月一回「こども園」が行う避難訓練の支援を行ったり、「揺れたら逃げろ!」という防災意識の啓発を行っています。

———確かに、繰り返し訓練することで体が覚えると、パニックにならずに済みますね。

青木主任 その成果が出て、(2015年2月6日牟岐町を震源とする地震で)緊急地震速報が出た時に、誰よりも早く園児たちがこの屋上めがけて走って逃げてきたんですよ!

———それは素晴らしい成果ですね!園児たちはこの場所をしっかり認識しているということですから。そう考えると、災害は何時ごろ起こるかも分からないので、夜間でも近隣の方が走ってこられるように非常灯の役割も大きいですね。

青木主任 はい。そのため、屋上へと続く非常階段の照明は常時点灯させています。以前は蛍光灯でしたが、明るさや電気代の事を考えると、平時も非常時も同じ照明であるLEDは大変便利ですね。

———このLED防災ライトをご採用いただいたのは、どのようないきさつだったのでしょう?

青木主任 美波庁舎は町の指定津波避難ビルですので「機能強化を図りたい」という思いがありました。この辺りでは堅固な建物の2F以上に避難しないといけない。万が一、夜間に津波が襲ってきたら...周辺が大規模な停電の中どうやってここをめざしてもらえるか、考えていたところでした。そんな中、徳島県から「徳島県LED応用製品普及加速化事業」で、LED 防災ライトを導入してはどうかという話があったんです。

———「徳島県LED応用製品普及加速化事業」とはどのようなものですか?

青木主任 徳島県内企業が5年以内に開発や製作をしたLED商品を推奨して導入する、という制度です。薦めてくれた県の担当者は、宮地電機さんが以前にも津波避難のために、ある企業の施設屋上および非常階段へ防災ライトを施工された実例を知っていたようです。

加川課長 ありがたいお話です。私も徳島県民ですから津波避難はひっ迫した課題です。もともと法令で、点灯が義務付けられているのが僅か30分という非常灯に対して「本当に30分で避難照明の役割は果たせるのか?」という観点で開発されたのが、LED防災ライト「ぐらっパ!」でした。仮に避難が完了しても、津波はいつ引くとも限りません。避難場所へ逃げても、陸の孤島と化したエリアで真っ暗な夜を過ごすのは、安全面だけではなく心理面でも不安があることでしょう。「ぐらっパ!(2017年製造中止)」は明かりセンサを内蔵し、丸2晩点灯することができるので避難場所の照明としても最適だと思います。

———電球色をお選びになったのも、リラックスできる環境へのご配慮ですね?

青木主任 色に関しては加川さんにお任せしましたが、そういうリラックス効果だったんですね。

加川課長 自分の好みもあります(笑)

青木主任 災害時には、まずは緊急避難して命を守ることが最重要課題ですが、長期化すると他の面でもケアが必要になってくると思います。そのためにも明かりの確保は大事ですね。

———子どもたちへの津波避難教育として制作された、梅田俊作氏の防災絵本「よりたかく よりはやく」拝見しました。絵がとてもイキイキして、郷土の言葉で書かれてあって、子どもたちにもすんなり入ってゆくでしょうね。

青木主任 これは徳島県で300部製作し、南部地域の小学校や保育所を中心に配布されています。お問い合わせいただいた方には貸し出しもしておりますし、デジタルコンテンツとして電子書籍化やアニメ化もしていますので、徳島文理大学のHPからどなたにもご覧いただけるんですよ。

———この絵本を書かれた梅田俊作氏が「避難というものを遊びとして取り込んだ時、イザという時、行動に出てくるようになる」と仰っているのを知り非常に感銘を受けました。日頃から子どもたちがこの美波庁舎のLED防災ライトを見て「揺れたらあそこをめざして走れ!」と憶えてくれたらこんなに嬉しいことはないですね。

青木主任 今後は、できたらもっと照明を増やしたい、と考えています。この美波庁舎の津波避難ビルとしての機能強化にこれからも取り組んでゆきたいです。


●南部総合県民局 美波庁舎《〒779-2305 海部郡美波町奥河内字弁財天17-1》
●徳島文理大学HP《電子書籍・アニメーション視聴》

担当/宮地電機 徳島ファクトリー 営業課長:加川 達也 文章/宮地電機 広報:菅野 乃美