──こちらの照明設計のコンセプトから教えてください。

加藤様 最初にオーナー様のもとを訪ねたとき、すでにお店の名前が決まっていました。「ノンレトリック」とは、他にないもの、自由なもの、不思議なもの、という意味です。「その名前を象徴するようなもの、かつ綺麗なものをお願いします」と言われました。素材からデザイン、照明まで、ハッと目を引く美しさを追求しました。

──幾何学模様を映し出す間接照明、斬新な美しさですね?

加藤様 ありがとうございます。光を素材に綺麗に写すにはどうしたらいいかを突き詰めました。光の当たり方が気に入らなかったので、一度作ったものを現場で加工し直したんです。前面パネルに厚みを出すことでエッジが綺麗に出ました。

山本担当室長 やり直してよかったですね。やはり妥協せずにやり遂げたことがこの結果につながっています。

──本当に綺麗です。緻密に計算された光と影のように思えます。

加藤様 スサ入りの漆喰壁に光が当たり、反射してふわっと優しい光になっています。マットなしっとりとした光の質感は、漆喰ならでは。間接照明がとても綺麗に映えています。

山本担当室長 本当に綺麗で、仕上がって点灯した際には居合わせた人たちから感嘆の声が出ました。平成27年度の「照明普及賞」を受賞したのも、この間接照明の素晴らしさだと思います。

──この光は、女性を美しく見せる光ですね。落ち着きもあり、リラックスできそうです。

加藤様 オーナー様のご意向もあって、対象年齢を高めに設定しました。ウエディングはキラキラと輝くイメージがありますが、ノンレトリックのウエディングはしっとりと落ち着きのある輝きです。

──流木のような柱も独特の雰囲気を創っています。

加藤様 店は細長いうなぎの寝床のような形状です。視線を奥まで引き込むために、柱を立てようと考えました。自然の素材を使いたくて、忌・石・ガラスなど考えているときに、会長からこの変木の写真を見せられ「これだ!」と。バリで買い付けたもので、この自然のままの形が、四角い箱に柔らかさを添えるよいアクセントになっています。

──間接照明の美しさもさることながら、色が変わるこのファサードの装飾も素敵ですね。

加藤様 レースをモチーフにしたデザインで、フロスト加工したアクリルに、カッティングシートを貼りました。LEDを仕込み、多彩な色に光るのが魅力です。

山本担当室長 これも何度も実験しましたね。

加藤様 はい。頭の中では「これをこうやればよい」と分かっていても、さらにいいものにするためには色々なパターンで実験し、その中から選んでいかねばなりません。店の中からも街行く人からも楽しめる明かりになりました。動きも出せるので、アイキャッチの効果もあります。

──色々な色が楽しめるということですが、常に色を変えていらっしゃるのですか?

加藤様 ショップの中のスイッチで色が変えられるようになっています。「夏は涼しく、冬は暖かく、季節やイベントに合わせて変えられるのがいい」と喜んでいただいています。

──ノンレトリックでは新しいプロジェクトが立ち上がるそうですね?

加藤様 はい。オーベルジュのような施設を造られるということです。ホームウエディングができるゲストハウスです。社長が前進あるのみ、バイタリティあふれる方で、素敵なものができると楽しみにしています。

すがのの現場取材日記

ブライダルショップにふさわしい「どんな色に染まる」ファサードはレースのような歯車のような…まさにノンレトリックなデザインです。設計された加藤様の柔らかい気品をそのままに感じさせる店舗がこの丸亀商店街の中でひときわ目をひいています。  宮地電機 広報 菅野乃美