高松シンボルタワー、すばらしいライティングで街を彩っておられます。
高松駅前にあり、四国一の151mの高さを誇る、その名のとおり高松市のシンボルです。そのビルの空間を生かしたガラスのキャンバスは、全国でも珍しいものだと思います。今回は、そのキャンバスに絵を描いていただくことができました。
今回のライトアップ誕生の経緯は?
発端は、タワーのガラス面に設置していた従来の照明器具に、不点灯が生じたことです。蛍光灯の光をバックにドットが並ぶデザインで、ドット部分にはRGB調光で色を変えられる照明器具を使用していました。県からの要請でブルーリボン、グリーンリボンなどのイベントに合わせてカラー演出をしていましたが、ブルーの色が出なくなったため、一昨年あたりから更新を検討しはじめました。 それまでは蛍光灯のメンテナンスも大変だったのです。その更新も含めて、何かおもしろいアイデアはないだろうかと考えていました。今回は、四電工さんと宮地電機さんに入っていただいて、思った以上にすばらしいものができたと思っています。
弊社との関係は今回が初めてですか?
以前、隣のオリーブタワーのライトアップについて、宮地電機さん・四電工さんからプレゼンをしていただいたことがあり、当時からLED照明に非常に興味がありました。今回機が熱したタイミングで宮地電機さんと四電工さんに業務を発注することになりました。
シンボルタワーの光の演出は、前任の担当者がいた頃からの長年の夢であり、計画でした。シンボルタワーが建って15年になりますが、ここに美しい彩りをという思いが10年越しで叶いました。
ありがとうございます。ライティングの動画を拝見しましたが、ゆっくりと色が変わっていくライティングはありますが、これだけ速い動きの照明は見たことがありません。
フルカラーでさまざまなプログラムを組めるタイプの照明器具なので、せっかくやるならいろいろな動きを見せていきたいと、計画段階から考えていました。以前は、バックライトが蛍光灯で単調だったので、見る人に「変わった!」と印象づけるには動かすのがベストだと考えました。
バックライトをLEDにして色をつけたら、ドット(照明器具)で色を出す以上に効果があることはわかっていました。ただ、光の広がりや陰影など建物内部の造作にも左右される部分も多いので、どこまでできるだろうという懸念がありました。2フロアでデモをやってもらって、それを見て「いける!」と。タワーのガラス面すべてをキャンバスにすれば、相当迫力があると思いました。
豊富なカラーチェンジのパターンがありますが、ライティングのコンセプトを教えてください。
「時を彩る色」です。四季折々に合った色を見せていきたいと考えました。器具自体、1600万色出せる性能があるので、例えば春には桜のピンク、たんぽぽの黄色などの春らしい色をメインに使いながら、アクセントカラーも交えてという風に、2ヵ月ごとに構成を変えています。全部で16パターンあります。
オフィスビルが季節感を演出するということは、これまでなかったのでは?
そうですね。働く人は19時には帰ってしまいますから、夜はオフィスビルというよりは、商業ビルとしてのデザイン、視覚効果を狙っていました。
通常、カラーの照明は賛同を得られにくいことが多いです。ファッションホテルやパチンコ屋さんといったイメージを持たれている方もいらっしゃいますから。普段は伝えるのが難しくて苦労しますが、今回はみなさんにご理解をいただいたので、スムーズに進みました。
みなさん、よく研究されていますよね。たくさんのパターンを見せようというのはみなさんの協議の中で決まったことですか?
四季のパターン、クリスマスやお正月などの催事、七夕や花火といったここでのイベントに合わせるパターンも入れようということで16パターンになりました。まだ公開していない隠しパターンもあります。
最初のうちはビルが燃えているような感じになったり、失敗もありました。徐々に淡い色に寄せていきました。
ときどきやり過ぎた感もあって、ブレーキかけました(笑)
瀬戸内国際芸術祭では国内外から大勢の方が来られるということで、瀬戸芸モデルのライティングパターンもあると伺いましたが?
知事も観光誘致に力を入れています。ここは島々への発着地ですから、オープニングと閉会式の数日間だけですが、特別なプログラムで彩っています。
瀬戸芸実行委員会から、開幕に合わせてライトアップしていただきたいと要望があったんです。瀬戸芸といえばブルーですが、今までブルーが出なかったので、やり替えてよかったなと思っています。
パッと目を引く、大胆でとてもアグレッシブなビジュアルです。
一般の方から「きれいなライトアップですね。いつまでやっているの?」というお問い合わせがたくさんありました。
期間限定のプロジェクションマッピングだと思っている人もいます。一年中、ずっと点灯しているのは魅力ですね。
プロジェクションマッピングとはどう違いますか?
プロジェクションマッピングは外部から投影するので、仮設的なものになります。
どうしても、他人の土地を使わないとできません。館内だけで完結することが難しいです。
なるほど。ビル自体に光を放つ仕掛けがあるのと、ビルに投影するのとでは大きく異なりますね。他に類がないということでチャレンジの部分もあったと思いますが、施工はスムーズでしたか?
施工する前の段階からみなさんに立ち会っていただいて、器具の位置決めから、どういう角度に振るかなど、一つひとつ確認していただきながら進めました。年明けから始めて、結構短期間でやりましたね。
施工期間は約2ヵ月でした。灯具の据え付けは2ヵ月弱で終え、その後プログラミングと演出を永易さんにお願いしました。
中野さんにもずっと付き合っていただきました。8階にプログラム専用の盤を取り付けているんですが、作業している間は見られないので、作っては外に出て確認してというのを繰り返しました。
日程的にタイトな中で、なんとかやり遂げていただきました。
点灯時間は日の入りから23時までと伺っています。
公共性のある建物なので、深夜帯までピカピカさせるのはやり過ぎだということで、22時から23時まではぼんやりとブルーに光る常夜灯にし、23時に消灯します。
22時でやめようかという意見もありましたが、華やかなライトが急に真っ暗になるのもさみしいということで、余韻を残すことにしました。
毎日その時間には落ち着いた色になるので、もう夜だな、今日は終わりだなというイメージを伝えることができます。
ここは高松駅を降りてすぐ目の前で、駅前の広場からきれいに撮影することができるのでSNSへの反響もあるのでは?
東京だと、まわり200mに建物がないところがないので、この距離で見ることができません。この場所ならではの視認性の高さがあります。
調整している時も、携帯電話を片手に立ち止まっている人がいました。前よりは見てくれる人が増えていると思います。
SNSにもアップしてくださっています。1つのパターンの長さを3分~4分に設定しています。立ち止まって、一通り見ていただける長さです。
作っている側からすれば物足りないんですが、実際に見る人にとっては3分半がいいところです。みなさんにも実際に見ていただき、検討して決めました。
香川県と高松市が夜型観光に力を入れているので、そこに彩りを添えられたらと思います。街中からも見えるので、人の流れを誘引できればいいですね。
夜のニュース番組の終わりに高松市の夜景が映し出されるのですが、その画面で光が動いているのが確認できるんです。気づいている人、見てくれている人もいると思います。
これから少しずつ根付いていけばいいなと思います。
○シンボルタワー撮影:ナカサアンドパートナーズ(2019.5.14) / ○人物撮影・文章:宮地電機 / ○取材日:2019.5.31
■シンボルタワー
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