ローリング鍛造、フリー鍛造を行う富士鍛工株式会社様。
主な設備は加熱炉・リングローリングミル・プレス機等ですが、
そのほとんどに省エネ設備が導入されています。
年度間エネルギー使用量1,500㎘以上の特定事業者として、
エネルギー使用の合理化に取り組むための「管理標準」を定め、
管理体制を整備することが義務付けられています。
専門知識を有する宮地電機の省エネルギー担当室がサポートし、
3年前に新設した室戸工場に適合する管理標準を作成支援しました。
- 宮地電機の新分野のサービス、「管理標準支援サービス」をご利用いただきましてありがとうございます。こちらは津波対策で移転してこられた新工場だと伺っております。
- はい。以前の場所は標高15mでしたが、ここは35mです。
- 静かでのどかな風景の中に、とても大きな工場があって驚きました。鍛造を行っておられるということですが、具体的にはどのような技術ですか?
- 鋼材を1200℃以上に熱し、熱いうちに叩いたり伸ばしたりして成形します。建設機械用旋廻ベアリングや減速器用歯車、産業機械用フランジなどを製造しています。
- 省エネ法の規制対象になる規模で、いろいろな取り組みをされていることと思います。今回は管理標準を作成されたということですが、当社の支援はお役に立ちましたでしょうか?
- はい。移転の作業で手一杯で、エネルギー使用量について十分な管理ができていませんでした。行政への定期報告書で省エネの努力が十分でないと評価され、工場調査を受けなくてはいけない事態になりました。しっかりとした管理標準が必要になりましたが、時間もなく、どういう風に作ったらいいかもわかりませんでした。
- 富士鍛工様は、もともときちんとした省エネの取り組みをされていました。それをしっかりと書式化し、エビデンスを取る方法についてアドバイスしました。
- 最初からいろいろ相談に乗っていただきました。こんなデータを取った方がいいとか、詳しくアドバイスをいただきました。
- 当社にとっても初めての案件でした。エネルギーの専門家である当社の前田顧問の豊富な知見がお役に立ったものと思います。
- この話が来たのが昨年の9月頃で、工場の現地調査が2月でした。やらなくてはいけないことがたくさんあってどうしようと思いましたが、おかげで心強かったです。
- 岩村さんはエネルギー管理者ということですが、移転前からご担当されていたのですか?
- 前の工場では別の者が担当していました。前任者が奈半利の工場に行き、こちらに移転してから私が引き継ぎました。
- 日常業務がある中でのご担当ということで大変なこともあると思います。実際、どのように管理をされていますか?
- こちらに移転してきてから、エネルギー管理システムを導入しました。設備ごとの電流・電圧などすべてモニターできるようになっています。個々の無駄なエネルギーがないかを見える化して監視しています。以前の工場にはそれがなかったので、どこでどれだけ使っているかがわかりませんでした。
- これからはそのシステムのデータを利用して、今回作成した管理標準のエビデンスを取っていくということですね?
- はい、そうです。今はまだデータを取っている段階ですので、今後は徐々にエネルギー使用量を減らす方向に努力してゆきます。
- こちらはかなりエネルギー使用量が大きいようですが、原単位で1年に1%の削減が必要だと聞いています。
- 5年平均で1%以上低減しなくてはいけません。
- 素人から見れば難しい課題のように思えますが。実現は可能ですか?
- はい。今回、我々が工場調査の対象になったのは、生産トン数に対するエネルギー使用量を報告すべきところ、移転後の試運転の期間のエネルギー使用量もそこに含めていたことにあります。原単位が下がっていなかったので、努力不足と評価されました。実際には原単位は下がっているはずなので、そのような報告の仕方を学ぶことも実績につながると思っています。
- やろうと思えばできる数字です。毎年1%ずつ下げたとして、100年後にはどれくらいだと思いますか?ゼロにはなりません。36%残るんです。省エネの技術は進みますし、ハード的にもさらによくなるでしょう。
- ハードの導入は不可欠になりますね?
- はい。そのために国の補助金などがあります。日本全体で省エネに向かっていかなくてはならない時代です。
- エネルギーの低減率を上げていけばSランクに位置づけられ、優遇税制※が受けられるしくみです。
- 環境省は省エネの観点から、二酸化炭素を減らす話をしていきますが、経済産業省は違います。エネルギーを減らしながら、経済も回していきましょうと。
- 生産量が増えれば使用するエネルギー量も増えます。ただエネルギーの使用を減らしなさいというのではなく、効率よく使いなさいということです。管理することで、それを実現していかなくてはなりません。
※省エネ最エネ高度化投資促進税制:直近2年度で連続してSクラス評価であった特定事業者または特定連鎖化事業者が、対象期間内に対象設備等を新たに習得して事業の用に供した場合に、特別償却等の税制優遇。
- 電気だけではなく、すべてのエネルギーを管理する必要があるんですね?
- 当社が使用している全エネルギーの中で、ガスが70%を占めています。ガスを効率よく燃焼させるためには、空気比が重要になります。ガスと空気の混ぜ具合ですね。それがブレると効率が悪くなります。
- それを是正するためにはどのような手段を取るのでしょう?
- 空気比を分析する装置を導入しました。1200℃の炉から出てくる排煙に含まれる空気を測るんですが、ものすごく熱いです。煙突から出る時点で200℃くらいありますから、その途中の空気を計測するのは大変です。
- 通常の空気には21%の酸素が含まれています。ガスが燃焼した後の空気の量を測って空気比を計算するんです。工業炉には、効率よく燃焼させるために国が決めた適正値があります。
- 今は1.2に設定しています。測定値を見ながら空気の量を調整しますが、今回は適正な値でした。空気比はあくまでも一例ですが、定めた管理標準の一つ一つを計測によって検証し、遵守しているエビデンスを残すことが我々のやるべきことです。
- お話を伺うと、ますます大変ですね。
- 14炉あるので、さすがに毎日はできません(笑)。年に1度、3年に1度など定期的にチェックを行う項目を明示しています。
- 空気比は製品の品質にもかかわってくるのではないかと思いますが?
- はい。品質を落とさずにエネルギーを落とすのは難しいことなんですが、そのギリギリを狙っていかないと。
- そこは非常に大事なところですね。そして、お二人のご尽力があって、国の監査も問題なく終えられたと伺っています。事前に弊社側と確認をなさったそうですね。
- はい。その中で、前田さんから監査を受ける際のポイントを教えていただいて、スムーズに終えることができました。何の指摘もなく100点。できすぎです(笑)
- 前田さんたちの監査の方が厳しかったです(笑)
- 私は80点以上取れればいいかなと思っていたのですが、お二人がしっかりと準備をして対応された結果だと思います。
- 今回、管理標準作成のお手伝いをするにあたり、何回くらい打合せをされましたか?
- 1ヵ月に2~3回です。
- 前田さんと佐古さんには、日曜日にも足を運んでいただきました。
- お二人もお休みを返上して取り組まれたということですから、熱心で前向きな姿勢が80点のところを100点に押し上げたのだと思います。
- 今日は会社の入り口にシバザクラが見事に咲いています。素晴らしいですね。
- 一年中花が咲いている場所にしたいとの思いから、敷地内にはいろいろな木や花を植えています。田んぼが終わると、秋にはコスモスを咲かせます。地元の方も見に来られますよ。
- 地域の方とのいい関係を築いておられるんですね?
- そうですね。地域雇用の創出にも力を入れています。
- 花壇の管理をお願いしている社員もいます。
- 地球環境の保全と、地域を大切にする会社の姿勢。素晴らしい会社ですね。今日はありがとうございました。
宮地電機のエネルギーに関するコンサルティングは、これまで省エネルギー診断を中心に行っていましたが、
「管理標準」の作成支援も行える体制となりました。その第一号として、富士鍛工株式会社様の管理標準を
作成支援させていただきました。弊社にとって初めてとはいえ、担当の前田技術顧問はこの道25年以上の大
ベテラン。エネルギーに関することは電気のみならず、熱源に関する管理運用まで全般細部まで熟知してい
ます。どの分野の会社様も、安心してお任せいただける新サービスです。
宮地電機 広報 菅野 乃美
「富士鍛工株式会社」ホームページ
781-6741 高知県室戸市羽根町甲1384-1 TEL(0887)24-6022